コピの部屋

好きなもの・人に対しての想ひを語ってみます。お子様ランチ記事を目指します!

走れ!エロス!【ショートストーリー】

 

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コピは激怒した。

 

あの町は、終わっている
妹の結婚祝いを『ドン・キフォーテきゃぶき町店』で買おうと思ったのに。
新しくこのエリアの王様になったコロナのせいだ。
新コロナ王は、手下のホスト一家を使いウイルスをまき散らす。
ウイルスに命を奪われる者まで現れた。
「妹のためのLEDシーリングライトが買い難いじゃないか!」
コピはマスクを装着し勇気を出して、きゃぶき町へ向かった。
JR新宿駅で降りると靖国通りを渡らないといけないので、西武新宿駅を利用することにした。
ちなみに、JR新宿駅の西口と東口、行き来がしやすくなったらしい。
ただの余談だ。

 

コピは、シーリングライトを買った後、ついでに新コロナ王の城へ向かった。
コロナ城は、城と言われればまぁ城だが、腕を組み歩く或る男女が利用する部屋を光るパネルの中から選ぶホテルに酷似していた。
コピの手には酒造メーカーの高濃度アルコール。
新コロナ王にアルコールを浴びせて、やっつけるつもりだ。
入ってすぐ、チャラいホストに捕まった。
コピは、王様の元へと連れて行かれた。
「人間など私欲の塊だ、信じられぬ」と言う、新コロナ王。
「ですよね~」と意見を合わせにいくコピ。
「ふざけるな!」激怒する新コロナ王。

 

コピは落胆した。

 

「お前は処刑だ!」王の怒りは収まらない。
「ちょっと待ってくださいよ~。妹が結婚するんすよ~。このLEDシーリングライトを渡したいんです。それだけ、それだけお願いしますよ~」
「では、お前の代わりの人間を用意しろ」
「芹沢ティウ助という友人がいます」
「何だ!その名は!」
「本名なんです・・・」
「役所で戸籍謄本を取ってからこちらにくるようにLINEしろ」
「芹沢の本籍地は、九州なんですよ」
「じゃあ、住民票でいい!」
翌日、中野区役所に寄った芹沢がやって来た。

 

コピが芹沢に小声で伝える。
「人間不信の新コロナ王の心を揺さぶるために、わざと最終日に戻るのでよろしく」
「は?」
芹沢が渋々コピの身代わりとなった。
コピは、妹の結婚式をとり行なうため、王に3日後の23時までの猶予をもらった。
結婚式は身内だけで行った。
大人数になると、席をどうすべきか迷いが生じるからだ。
温泉宿泊施設の結婚式場を選んだ。
参加者は温泉にゆっくり浸かり、泊まることができる。

 

コピは激怒した。

 

料理が美味しくない。
温泉が今一つ。
部屋の眺望が良くない。
しかも、妹の旦那は声が小さく頼りない・・・。
朝食バイキングを食べたあと、コピは芹沢の元へと急いだ。

 

もうすぐ、きゃぶき町の城だが、コピに不運が訪れる。
接客を伴う飲食店の料金が、なんと半額になっている。
足止めを余儀なくされた。
あの政治家は、やっぱり、欲望という名の川の氾濫が止められなかったのだろうか?などと考える。
店を出てすぐに、また新たな客引きが現れる。
心身ともに疲労困憊して倒れ込み、一度は城へ戻ることを諦めかけた。
芹沢を裏切って逃げようか、とも思う。
コンビニで栄養ドリンクを購入。
「あ、袋はいりません」
エネルギーをチャージし、約束を守ることにする。
やっとの思いで城に到着した。

 

まさか戻ってくるとは思っていなかった王様が驚いている。
コピは、処刑されそうな芹沢に近づき言った。
「接客を伴う飲食店の料金が半額だったからハシゴしちゃった。もう歩けないよ」
芹沢は激怒した。激怒して叫んだ。
「走れ!エロス!」
2人は抱き合って号泣した。
その姿を見た新コロナ王は呟く。
「素敵やん・・・」と。

 

感動した王様は、処刑を取りやめた。
「2人で旅行にでも行ってこい」
旅行代金の半分程度をクーポン券で補填してくれる新コロナ王。
「ただし、最大2万円な」
王様の粋な計らいに、きゃぶき町の人々が歓喜の声をあげる。
「万歳、王様万歳!」
ひとりのキャバ嬢が、紺のジャケットをコピに捧げた。
コピは、まごついた。
芹沢は、気をきかせてコピに教えてやった。
「コピ、君は、真っ裸じゃないか。早くそのジャケットを着るがいい。この可愛い嬢は、コピの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ」
勇者は、ひどく赤面した。
彼女は微笑み、口角は上がっている。
コピがキャバ嬢に言う。

 

俺は服を着るから、あんたはマスクをしろ!

 

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このおはなしはフィクションです。
実在の人物や小説や団体などとは関係ありません。