『詐欺師の言い分』 作:コピ
「君は自分が何をしたのか分かっているか?」
私が問うと詐欺師は答えた。
もちろんです!
当たり前じゃないですか!
僕はめちゃくちゃ反省しています。
自分の仕出かしたことが正しいなんて思っちゃいない。
結果的に被害者になってしまった人には心からお詫びをしたいです。
ただね、一つ言わせてください。
僕はお金を『借りた』のです。
返すつもりがありました。
返すつもりが無いのに借りるのは悪人だと思います。
僕には返すつもりがありました。
いいえ、僕が悪人じゃ無いとは言いません。
多くの方にご迷惑をお掛けしたのだから・・・。
借りたお金ですが、正しくは『預かったお金』です。
預かっていたお金ですから、返済期限などはありません。
当然ですよね。
確かに、預かったお金に手をつけたのは良くないです。
ただ、コロナ禍で収入が減りましたからね。
僕はお金に困っていたのです。
はい?
そうです!
ギャンブルで使ってしまった部分もあります。
でも、コロナ禍の影響が大きいんですよ。
僕もある意味、被害者かも知れない。
ん?
よーく考えるとおかしくないですか?
「金を今すぐに返せ!」と言う人間の方が。
だって、借りたんじゃなく預かっていたんですよ。
しかもその預かっていたお金って、かなりヤバイ金なんです。
表に出せない金を僕が預かってあげてたんです。
感謝して欲しいくらいです。
僕は「預かったお金が手元に無いので少し待ってくれ」と言ったんです。
それを聞いた相手は何をしたと思います?
怖い人を使って僕を脅し始めたんです。
僕の家族も脅すんです。
有り得ません!
僕はそのお金を自分のモノにしようとしたことは一度もありませんよ。
時間が掛かるかも知れないけど必ず返すという気持ちはありました。
そういう誠意ある人間に対してこの仕打ち。
もう友達でも何でもありません。
困った時に助けてくれないヤツは友達とは呼べません。
だから僕は戦うことに決めたんです。
「そんなヤツは許しちゃいけない」と。
そいつの秘密を暴露してやろうと思います。
世の中にそいつが如何にひどいヤツなのか、を。
えっ?
あぁ。
もちろん、預かっていたお金は叩き返してやりますよ。
それが筋でしょう。
叩き返してやるために、やっぱりお金が必要なんですよね。
だから、複数の一般女性に声を掛けたんです。
「芸能人に会わせてあげるからお金を用意して」って。
僕の力を持ってすれば、本当に会わせることなんてたわいないこと。
出来るんだから別に詐欺ではない。
ただ、脅したヤツにお金を叩き返すため僕には時間が無かった。
それだけ、なんです。
やっと僕を助けてくれる救世主が現れました。
お金の都合をつけてもらいましたよ。
「芸能人に会わせる」と言って一般女性から預かったお金。
すぐに返そうと思いまーす。
イヤイヤイヤ。
僕はね、当たり前のことをしているだけです。
偉いだなんて、これっぽっちも思っていませんよ。
でも、僕が「返金します」と言ってるのに応じないヤツがいるんです。
僕の実直な行動を抑え込もうとしている。
有り得ません!
こういうふざけたヤツは世間に名前を晒しちゃった方がイイと思います。
だって、人の誠意を踏みにじるような人間ですから・・・
私は詐欺師の話を止めた。
「ちょっと待って!君は自分が何をしたのか本当に分かっているか?」
この物語はフィクションです
実在の人物や団体などとは関係ありません