コピの部屋

好きなもの・人に対しての想ひを語ってみます。お子様ランチ記事を目指します!

やり手の村長と言いなり村長【少子化ショートストーリー】

 

 

『やり手の村長と言いなり村長』 作:コピ

 

ある国の中に、2つの村がありました。
東の外れにある村は、どの場所よりも早く日が昇るので『日村』と呼ばれました。
お隣の村は、国の真ん中あたりにあるので『中村』と呼ばれます。

 

『日村』の村民はみな勤勉だったため、この国の首都『米村』に次いで二番目に豊かな村でした。
しかし、十年ほど前から『日村』に変わり『中村』が第二位となりました。
『中村』は、安い人件費で他の村から仕事を受注し、更に仕事のノウハウを自分のものにすることで躍進したのです。
『中村』は人気の村となったので人口が爆発的に増えました。
鼻高々の中村村長でしたが、困ったことが起こりました。
急激な人口増加による食糧難です。
人々の住む場所が確保できない状態にもなっていきました。
やり手の中村村長は、対応策を模索するのでした。

 

第三位の『日村』の村長は自分では何も決められない人です。
よく判断を誤ってしまいます。
この村で疫病が広がった時も、村の有力者の意見に従って「旅をしよう!」という活動を推し進めました。
病人が減ったら旅を勧め、病人が増えたら旅を止める、それの繰り返しでした。
村民が怒りを露わにすると、やっと事の重大さに気づく村長。
村民からの人気か、有力者からの献金か、どちらを選ぶか悩ましい日々が続きます。
そんなリーダーの村ですから、間もなく第四位の『独村』に追い抜かれることでしょう。

 

ある日、『中村』の村長が、『日村』の村長を呼び出しました。
「日村村長、近況はどうですか?」
「あまり上手く行っていません。今まで村民にバレないよう私腹を肥やしてきましたが、フミハルという情報屋にマークされるようになってしまいました。村民に、不必要な会食をしていることが知れ渡り、ストレスが溜まっています」
中村村長は、笑顔で言いました。
「それでは、私がお助けいたしましょう!」

 

『日村』の村長は、『中村』の村長の言いなりになることを決めたのです。

 

『中村』の村長の思惑は『中村』の村民を『日村』に移住させ、食料と住宅の問題を解決しようとするもの。
更には、『日村』を丸ごと乗っ取り『中村』の一部にしてやろう、と。
『日村』の村民は、皆がとても礼儀正しい。
故に、他の村からの移住に消極的でした。
平和で穏やかな生活が、移住者によって壊されるのではないかと危惧したからです。
その村民意識の隙間を突く、日村略奪作戦が今まさに進められようとしています。
そんな事とは露知らず、日村村長は『中村』から、今までの献金の数十倍ものお金を得て満面の笑みを浮かべるのでした。

 

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『中村』による日村略奪作戦が、いよいよ始まりました。
作戦の軸は『日村』の生産年齢人口を減らすことです。
働き手がいなければ、他の村からの移住者を受け入れなければならない・・・そこを狙います。
「子供を持ちたくない・持てない」
日村村民がそう思うように意識操作をしました。
まず、男女平等を謳います。
女性へ社会進出を促し、晩婚化を謀りました。
十分な給料を与えてしまうと貯蓄をし子育てをされてしまうので、女性を悪い条件で働かせるようにします。
低賃金で働く女性を引き合いに、男性への定期昇給も抑制しました。
貧困にあえぐ若者の前から、結婚は遠のいていきます。
愛し合って結婚した男女も、ギリギリの生活で子供を諦めざるを得ません。
子育てに優しくない環境を作り出し『日村』の子供は減り続けました。
『中村』の操り人形の日村村長、よく意味が分からないまま村民の前で申し訳なさそうな表情を浮かべ言います。
「これからも、少子化対策を続けます!」
多くの村民は、村長の言葉を真に受けてしまいました。

 

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暖かな春の日差しが心地の良いある日。
日村村長とその取り巻きがお花見をしています。
『中村』から貰ったお金を使い、豪勢な宴会となりました。
「このまま中村に従えば安泰だ」
日村村長一行は、皆、上機嫌です。
酔っぱらった村長が言いました。
「全集中で桜を見るかい?ハハハ」

 

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この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。