ある日、小さな赤ちゃんを抱いたお母さんとその旦那さんが一緒に歩いておりました。
旦那さんが何かに気が付きました。
遠くにライオンの群れがいます。
向こうも人間親子に気が付き、少しずつ近づいてきます。
このままでは3人とも、ライオンの餌になってしまいます。
旦那さんは少し高さのある木のてっぺんに赤ちゃんを置きました。
夫婦は大きな声を出しながら、わざとライオンから見えるように走って逃げます。
「赤ちゃんだけでも何とか生き残って欲しい」
夫婦の願いは通じるでしょうか?
ライオンの群れが夫婦を追いかけます。
旦那さんが転んでしまいました。
「俺のことはいいから君は早く逃げて!」
奥さんは泣きながら走って逃げました。
「わたし、駄目かも・・・」
そう思った瞬間、ライフルの銃声がし、奥さんは気を失いました。
目を覚ました奥さんはハンターのおかげで無傷でしたが、旦那さんはライオンに食べられ、赤ちゃんは消えていました。
奥さんの心にポッカリと穴が空きました。
埋められるものが、何一つありません。
「この世に神様などいない・・・」
空を見上げて呟きました。
その時です。
遠くの方から、大きな鳥がこちらに向かって飛んできます。
コウノトリです。
コウノトリが赤ちゃんをくわえてやって来ました。
ライオンから救った赤ちゃんをコウノトリは置いて羽ばたき去ります。
「あ、あぁー、ぼ、坊や・・・」
お母さんは、赤ちゃんを抱きしめました。
赤ちゃんはコウノトリの「コ」と平和を表すピースの「ピ」を取って、『コピ』と呼ばれるようになりました。
コピは、すくすく育ちました。
お母さんは鳥を大切にした生活を送ります。
勿論、食べたりしません。
コピも同じです。
食べたりしません。
この親子の今があるのは、鳥のおかげなのです。
🐤🐤🐤
大きくなったコピが一人旅へ出かけました。
乗っていた小型セスナが故障し、無人島に不時着します。
操縦士と乗客合わせた4人全員、軽い怪我で済みました。
しかし、果物や木の実などの植物が無い島で、危険な岩場に囲まれ海に入ることも出来ません。
持っていた食料が底を突きます。
島の裏側に大量の鳥がいました。
アホウドリです。
アホウドリは人間に対する警戒心が薄いので、簡単に捕まえることができます。
3人はその肉を食べましたが、コピは食べません。
鳥を神のように思っているからです。
コピは衰弱していきます。
このままじゃいけないと思った操縦士があるスープをコピに飲ませます。
「こ、これは、な、なんですか?」
「ウミガメのスープだよ。陸に上がってきたカメを捕まえたのさ」
「あ、ありがとう・・・」
あまりの美味しさにコピは感動しました。
無事に母親の元へと帰ってきたコピ。
「お前!心配ばかりかけて・・・」
母の怒鳴り声が心地よく感じます。
それから2か月の時が経ちました。
コピは、ウミガメのスープの味が忘れられず、どうしても飲みたいと思いました。
住んでいるエリアで唯一のカメ料理専門店へ予約を入れます。
日頃の感謝の気持ちとして、母親をその店に招待しました。
「この世で一番美味しいスープだから期待して!」
出されたスープを飲みました。
美味しかったです。
美味しかったのですが、あの味ではありません。
「おかしいなぁ」
料理長を呼びました。
「これはウミガメのスープですか?」
「はい。間違いなくウミガメのスープです」
コピは、軽い眩暈に襲われます。
全てを理解してしまいました。
あの無人島で操縦士が持ってきたスープは「アホウドリのスープ」だった、と。
自分の命を救ってくれた鳥類を食べてしまった・・・。
コピは、罪悪感に苛まれます。
そして誓いました。
もう二度とトリは食べない!
まぁ、こういった理由で僕は鶏肉を食べないのです。
ご理解頂けましたでしょうか?
食べものの好き嫌いが無い人の中に「頑張れば食べられる」と思っている方がいらっしゃるようですが、そんなことはありません。
だから、「これ食べられない」と言う人に優しくして欲しいと思います。
そうしないと、このような長いストーリーを聞かされますよ・・・。
本日は、以上でございます。
今回はこれで乗り切ったと感じていますが、ウニとかパクチーの食べない理由も考えなければなりません。
あと15個くらいは考えないといけないので、大変です。
ちゃんと考えるので、嫌いにならないで!
お読み頂き、有難うございました。