コピの部屋

好きなもの・人に対しての想ひを語ってみます。お子様ランチ記事を目指します!

ぼくを極刑にしてください! ~被告人選択制度~

f:id:copinoheya:20200531204702j:plain

 

旗色が悪いよ。
なんで俺が国民議会に呼ばれているのかねぇ。

 

ある国の国民議会。
本日のお題は、死刑制度について。
人権擁護弁護士と極刑存置大学教授の戦いになりそうだ。

 

「諸外国では既に死刑制度が廃止になっています」
出た、諸外国。
じゃあ、全て諸外国の真似して議会なんて止めちゃえよ、面倒くさい。
そんでもって、あいつの顔、嫌いなんだよなぁ。
人権の擁護をほざくボケ前橋。
人権って、犯罪者の擁護じゃねえか。
被害者のこと考えたことあるんか?前橋ちゃんよ。
「・・・教授、教授」
「あ、はい」
「よろしくお願いします。例の件、大丈夫ですから」
「えぇ」
正直、俺はどっちでもいいんだよね。
死刑があっても、無くっても。
知り合いの政治家先生が「死刑制度を守りたい!」と熱心にお願いするものだから、引き受けちゃったよ。
しかも、今日の議会はテレビ放送されるらしい。
俺の発言が国民の総意のように、マスコミが動く予定だって。
でもね、このまま死刑制度は廃止になるんじゃないかな。
そう思う。
それよりも、彼女のことが気になるよ。
ロールキャベツ、赤か白かなんて、どっちでもいいじゃない。
あんなに怒るかね?
「君の作りたい方で」って言えば良かったのか。
何でも、どっちでも、いいよ。

 

「では、福島教授のお考えは如何ですか?」
俺の番か。
全国民が俺の言葉を待ってる、って言われてもねぇ。
「えー、じゃあ、被告人に決めさせるのはどうですか・・・ね」
「どういうことですか?」
「ですから・・・被告人に極刑が良いか聞くんですよ」
「は?」
議会がざわめきだした。
人権弁護士たちが騒ぎ出す。
前橋が俺を見下した目をしている。
廃止と存置、双方の政治家が立ち上がる。
極刑存置派の若手議員が怒っている。
「教授、どうするんですか!」
「えっと・・・」
政治家たちが議長の元へ集まる。
「ぎ、議会を一旦中断します!」

 

国民議会は、30分後に再開される予定だ。
何とかしなければならない。
ならないのだけど、どっちでもいいよ。
でも、死刑制度を残さないと、怒られるんだろうなぁ。
怒られるの、嫌いなんだよ。
とにかく、何か考えないと。
被告人に選ばせる、というのは悪くないと思う。
そこからだよ。
選択肢のもう一つを思いっきり厳しい罰にすればいい。
極刑と同等の。

 

「会議を再開します」と、議長の声。
質問席には前橋。
「福島教授にお伺いしますが、先程の被告人への質問は、本気でおっしゃっているのですか?私には理解できません」
「ですからね。被告人に選択権を与えるんですよ。いいでしょ」
前橋が呆気にとられている。
「前橋先生の希望通りになると思いますよ。だって、被告人全員が極刑を選ばなければ良いのですから」
「で、では、死刑制度廃止に賛成ということでいいですね?」
「前橋先生、聞いてました?廃止したら選択肢が無くなるではないですか。僕は被告人に選択させたいのです。それが民主主義でしょ?罪を犯しておいて、その罪を償えないのであれば、刑法なんて必要ないですよ。違います?」
「・・・」
気分爽快。
あの前橋弁護士を煙に巻いてやったぞ。
ここからが大変だけど。

 

福島教授の「被告人極刑選択制度」が決まった。
マスコミの影響で、多くの国民の支持を得たからだ。
死刑制度は一応、残るかたちとなった。
被告人が選択できる「もう一つ」は何だろう?
福島教授がやけくそで考えた選択肢。
それが「国立研究センター行き」だ。

 

「教授、本当にありがとうございました」
「いえいえ。人類のためになりますから」
「死刑制度は残りましたが、自ら選ぶ人間なんていませんよね?」
「それが、そうでもないと思いますよ」
「え?」

 

福島教授が考えた「国立研究センター行き」。
国立研究センターとは、国の高度医療を実現するための場所であり、遺伝子・細胞・臓器などの治療研究や薬の開発が行われている。
受刑者の役目は、その施設内で医療発展に協力をすること。
簡単に言えば、人体実験の被験者だ。
施設内にある独居房に入り、24時間監視される。
一度、研究センターに入ったら、外部と連絡を取ることを許されない。
センター内で起こった事件・事故について、一切、センター職員の責任にはならない。
また、センター職員は、施設内で銃の使用を許可されている。

 

職員が気に入らない受刑者は毒薬を飲まされる
逃げようとした受刑者が射殺された
実験に必要だからと指を2本切断された
夜中に受刑者たちのうめき声が聞こえる
受刑者が減り続けセンターが大変困っている

 

国立研究センターについての噂話がある。
これは、俺が流したデマだ。
すると、どうだろうか。
自ら極刑を求める被告人が増えたんだよ。
今日の裁判でも、責任能力の判断が難しいから、とりあえず“センター行き”を言い渡された被告人が叫んでたな。
「ぼくを極刑にしてください!」って。
そんな判断能力はあるんだ。
おかしいね。
人類の為に一肌脱ごうという犯罪者はいないのか?
いないか・・・。

 

んー、ちょっと考えてしまうんだ。
本当にこれで良かったのだろうか?と。
それよりも、今は、彼女だよ。
シチューが、白か茶かなんて、どっちでもいいじゃない。
「君の作りたい方でよろしくね!」
本当はね、どっちでも、いいよ。

 

 

このおはなしはフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。