コピの部屋

好きなもの・人に対しての想ひを語ってみます。お子様ランチ記事を目指します!

我が国は「老後給金制度」のために「警急時宣言」を出しません

 

我が国は、四方を海に囲まれた、大小約7000の島からなる「島国」である。
特徴は、医療が充実しているおかげで、みな長生きということ。
この国に生まれてきて良かったと、心から思っている。

 

私は、この国の会計省の事務方トップだ。
私が国を動かしている、といっても過言ではない。

ここ数年で、困ったことが起きている。
「老後給金制度」が破綻しかかっている。
老後給金というのは、若い頃に納めた金を働けなくなった老後に、命が続く限り受け取れるシステム。
実際には、老後給金の預かり金を運用して利益を出すようにしている。
このシステムは、景気が良くなることと、若い世代の人口が多い、いわゆる人口の綺麗なピラミッド型が絶対条件だ。

その制度が立ち行かない。

 

原因は簡単だ。
晩婚化と少子化による、働く若い世代の減少。
景気の落ち込み。
高度医療によっての長命化。
そして今日、私は首相に呼ばれている。

 

 

 

(首相官邸)

「おい、保険大臣。どうなっているんだ?」
「首相。この流行り病は、収まる気配がありません」
「どうすれば・・・」

 

新型のウイルスが、我が国で猛威を振るっている。
初めての感染者が出てから半年が経つが、終息の兆しが無い。
現政権の対応が遅く、国民の不満が爆発寸前だ。
恐らく、次の選挙では惨敗するだろう。
私が提案した、小金のバラマキやマスクの配布が、国民の支持を得られなかった。
まぁ、三日で考えた対策だから、仕方が無いな。
それにしても、気が重い。ドアも重い。

 

「おう。会計長。待っていたぞ!」
「首相。お呼びでしょうか?」
「もうそろそろ『警急時宣言』を出そうと思うのだが」
「お、お待ちください。我が国が滅びてしまいます」
「国民の怒号が日に日に大きくなり、私の首相の座も危うい」

 

いつもそうだ。
この人は、結局、自分の事ばかり。
だから、私のような人間が、この国に必要なのだ。

 

「首相。もうしばらく辛抱してください」
「いつまでだ?」
「少なくとも、あと半年は・・・」
「なぜだ?」

 

問題を先送りしようとする私の脳内に、アイデアが降ってきた。
ウイルスの影響で亡くなるのは、概ね高齢者だ。
このウイルスが蔓延すれば、高齢者が減り「老後給金制度」が正常に戻るのではないか?
老後給金制度が破綻せずに済む。
私の力で、この国を守ることが出来るのだ。
それまでこの政権が持つか、心配だが。

 

「首相!すべての国民を守るためです」

 

f:id:copinoheya:20200409222437j:plain

 

我が国で生き残ったのは、潔癖症のニートだけ

■歌詞・小説・読み物

 

「あー、めんどくせぇ」

 

新型のウイルスが、この国で猛威を振るい始めて、もう9年になる。
当時の政治家が後手後手に回ったせいで、みんな亡くなってしまった。
ウイルスは変異し、驚くほどの殺傷能力を持つ。
既に医療では止めることが出来なくなった。

 

生き残ったのは、俺と同じ人種。
家に引きこもるニートで、極度の潔癖症の人間だけ。
生存を確認できるのが、首都の近くに住む100人ほど。
生存者たちをまとめるため、ある組織が作られた。
この国の統治機構で、その昔あった、内閣のようなものだ。
現在の首相と呼ばれている男は、資産家の息子で何かと指図をする。
そこそこの大学を出た俺が、会計大臣をやらされている。

 

「おう。会計大臣。待っていたぞ!」
「首相。お呼びでしょうか?」
「私の考えに賛同しない奴をウイルス部屋に入れようと思うのだが」
「ま、またですか。このまま人が減れば国が消滅してしまいます」
「私に不満を持った国民が増えれば、首相の私の立場が危うい」
「・・・(あ゛ーめんどくせぇ)」

 

いつもそうだ。
この人は、結局、自分の事ばかり。
だから、俺のような人間が、面倒を被るんだ。

 

「首相、もうしばらく辛抱してください」
「いつまでだ?」
「あと、10秒」

 

俺は、近くにあった大理石の灰皿で、首相を思いきり殴った。

「な・・・なぜ、だ?」


「首相!すべての国民を守るためです」

 

 

 

この話はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。